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西日本フィナンシャルホールディングス 代表取締役社長 村上 英之

西日本フィナンシャルホールディングス(FH)は2023年4月、
新たな中期経営計画「飛翔2026~つなぐココロ、つなげるミライ~」をスタートしました。
本中計は社会・経済環境が激変する時代にあって、西日本FHグループがどのような姿を目指し、
どう企業価値を高めていくかの羅針盤となります。
村上英之社長に、中計に込めた思いや狙いについて聞きました。

社会課題に対応し、企業価値を高める

本中計の前提となる、西日本FHグループを取り巻く社会・経済についての認識を伺います。

 社会・経済環境は大きく変化しています。なかでもSDGsやESG、DX(デジタル・トランスフォーメーション)など、世界が共有する大きな社会課題は、今後長期間にわたって私たちが向き合わなければならないものです。いわば「不可逆的」なテーマと捉えています。
 本中計の策定にあたっては、西日本FHグループがこうした不可逆的テーマに対応し、どのようなビジネスモデルを描くのかを考えの中心に据えました。

本中計では、社会課題に対応すべく、幅広く高度なソリューションをお客さまに提供することを掲げています。

 脱炭素やDXなどは、取引先のお客さまにとっても避けることのできない課題であり、その対応をサポートするのは、地域金融グループとしての責務です。同時に、このサポートをビジネスモデル化することが、わが社グループの成長にとって極めて重要です。
 社会課題の解決に取り組むお客さまを多様なソリューションでサポートし、それによってお客さまの支持を高め、西日本FHグループの収益力につなげる。いわば、社会的価値と経済的価値を両立させることで、企業価値を高めるという思想です。「地域の発展なくして、わが社の発展なし」という信念も、同じことを表現しています。
  西日本FHグループは、西日本シティ銀行を核に、カード、証券、コンサルティングなど多様な企業で構成されています。前中計期間中の2022年度には、九州リースサービスとシティアスコム、イジゲングループの3社をグループに迎え入れました。SDGs/ESG、DXなど現在の社会課題に対応したソリューションを提供するための「陣構え」は相当程度、整ったと評価しています。
 この強化されたグループ総合力を、本中計で取り組む施策を通じてさらに磨き上げ、お客さまに最適なソリューションを「ヒューマンタッチ」と「デジタル」の両面で提供します。

お客さまとの接点こそが企業価値の源泉

本中計ではリレーションシップ・マネジメントの強化を重要テーマに挙げています。

 お客さまに最適なソリューションを最適なタイミングで提供するには、お客さまのことを知る必要があります。我々の究極の強みは、地域や個別企業のことを「よく知っている」という点です。定量的にも定性的にも知り尽くし、数字に現れない経営者の思いや経営力も把握する。お客さまとの接点こそが、当社グループの企業価値の源泉だと認識しています。
 一方、法人も個人もお客さまの悩みやニーズは時代とともに多様化・高度化しています。本中計の基本戦略の一つ「お客さま起点の“One to Oneソリューション”の提供」を実現するには、お客さまとこれまで以上に親密な関係を築き、課題やニーズをく汲み取る必要があります。そのために、リレーションシップ・マネジメント強化を本中計の重要テーマに掲げました。具体策としては、特にヒューマンタッチに焦点を合わせて、「営業態勢の強化」と「人的資本の強化」に取り組みます。
 「営業態勢の強化」の主要施策の一つとして、西日本シティ銀行の営業態勢の見直しを進めます。お客さまとの接点である銀行の営業店を、お客さまの課題やニーズをこれまで以上に的確にキャッチする「コンサルティング中心の場」としていきます。営業店はお客さまのニーズをつかんだら、早い段階で銀行本部につなぎ、銀行本部やグループ各社が持つソリューションから最適なものを探し出し、提供できるようにします。
 何より大切なのは、銀行の営業店・本部、グループ各社が「お客さまのために」と目線をそろえて、それぞれの役割を果たすことであり、こうした体制を確立するため、本中計ではさまざまな手を打ちます。
 すでに2023年4月には、営業店から情報を受け取り、グループのソリューション機能とつなぐ専門部隊として、コンサルティングサポーターやウェルスマネージャーを銀行本部に置きました。
 また、2024年には、営業店のシステムを更改します。効率化を進めて店頭事務を減らし、コンサルティングの場にふさわしく対面での相談時間を増やします。

「人的資本の強化」はどのようにすすめますか。

 わが社グループには、非常にモチベーションが高く、熱い思いを持った人が多くいます。そうした人が自身の能力をさらに高め、幅広い意見を自由に出し合う組織風土にすることが、重要だと考えています。
 本中計では、「人財育成」と「働きがいの向上」を柱にした「人的資本の強化」に、これまで以上に力を入れます。人財育成では、コンサルティング・DX・企画などの分野で当社の将来を担う戦略人財の育成に加え、階層別・業務別研修の大幅な拡充などで役職員一人ひとりの成長を後押しします。
 働きがいの向上については、2026年に竣工予定の新本店ビル(福岡市博多区)をはじめ、老朽化した営業店のリニューアルを進め、店舗を訪れる地域のお客さまにとっても、そこで働く役職員にとっても使いやすい環境を整えます。

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経営理念の価値観を共有する

本中計で西日本FHグループが目指す姿は、当然ながら経営理念と重なります。

 企業の形や組織、仕事のやり方は、社会の変化に適応しなければなりません。一方で、「高い志と誇りを持って時代の変化に適応し、お客さまとともに成長する総合力No.1の地域金融グループを目指します」というわが社の経営理念は変えてはならないものです。地域金融グループの使命と、グループの目標を過不足なく示しており、私たちが拠(よ)って立つものだからです。
 「ココロがある、コタエがある」というブランドスローガンも同様です。地域やお客さまに対する「思い」=「ココロ」がベースにあり、グループ全体で最適な「ソリューション」=「コタエ」を提案する。わが社グループのビジネススタイルや役職員の行動指針を簡潔に表現しています。
 不確実性が高い時代だからこそ、経営理念とブランドスローガン、そして地域とともに発展するという信念に込められた価値観を、当社グループの全役職員で共有することが重要だと考えています。

地域経済を総合的に支える存在に

 現在、異業種がデジタル技術を使って金融事業に参入するなど、金融機関の経営環境は大きく変化しています。その中にあって私たち西日本FHグループは、融資や産業育成といったさまざまな機能をこれまでの歴史で培ってまいりました。強固な財務基盤による信用力もあり、本業以外の社会貢献も幅広く行っています。そしてグループには、地域のために役立ちたいという社員がたくさんいます。
 我々の主力営業エリアである九州・福岡は、全国に比べてかなり恵まれたマーケット環境といえます。福岡県の人口減少率は、全国に比べて緩やかです。中でも福岡市は2035年頃まで人口が増加すると予想されています。さらに、九州各県の中核都市では大規模な再開発プロジェクトが進んでいます。TSMC(台湾積体電路製造)の進出をきっかけに、熊本県を中心に半導体産業の集積も進むと見込まれています。
 このように元気で将来性のある地域経済を、トータルで支えるグループ総合力こそが私たちの強みです。常に経営理念を中心に置いてグループ総合力をさらに高め、飛躍の3年間にしてまいります。

村上 英之(むらかみ・ひでゆき)

1961年3月14日、大分県生まれ。
大分県立日田高校、九州大学経済学部卒業。1983年に西日本相互銀行(現西日本シティ銀行)に入行。常務執行役員総合企画部長、取締役専務執行役員、西日本フィナンシャルホールディングスの取締役執行役員などを歴任。2021年6月から現職。趣味は読書、ゴルフ、美術鑑賞。読書はカズオ・イシグロ氏や原田マハ氏らの作品を愛読。理髪とゴルフ以外は、時間が合う限り常に妻と一緒に行動する。