自然関連課題への取組み

TNFDへの対応

近年、世界各国で気温上昇、干ばつ、森林生態系の劣化等、さまざまな問題が生じています。西日本FHグループの主要地盤である九州・福岡においても、記録的な豪雨災害が発生しており、気候変動・自然関連課題への対応は、持続可能な地域社会の実現にとって大きな課題となっています。

西日本FHグループは、気候変動・自然関連課題の対応を経営戦略における重要課題と位置付けています。

ガバナンス

西日本FHは、取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において、グループのサステナビリティに係る対応方針や重要事項の協議、取組状況の把握・助言等を行っています。サステナビリティ委員会での協議内容は、経営会議での審議・決定を経て経営戦略やリスク管理に反映させるとともに、取締役会に報告しています。取締役会は、報告された内容に対して適切に監督しています。

サステナビリティに係る具体的な活動については、経営企画部SDGs推進室が一元的に統括し、グループ各社の取組状況のモニタリングや施策のフォローを行っています。

サステナビリティ経営体制

戦略

西日本FHグループは、グループサステナビリティ宣言において、「地域の発展とグループ企業価値の向上を目指すとともに、持続可能な社会の実現に貢献」していくことを掲げています。環境への取組みに関連するSDGs重点項目として「目標11.住み続けられるまちづくりを」「目標13. 気候変動に具体的な対策を」を掲げ、気候変動・自然関連課題への対応を経営戦略における重要課題と位置付け、気候変動・自然関連課題それぞれに関するリスク及び機会を踏まえたさまざまな施策を展開しています。

自然に関するリスク

あらゆる企業活動は、自然資本(地球上の生物資源・非生物資源といった天然資源のストック)から得られる生態系サービスを活用していると言われており、地域の産業は地域の自然資本と依存関係にあると考えられています。

西日本FHは、地域の自然資本を守ることは持続可能な地域経済の実現という面からも重要だと考え、外部コンサルティング会社と協働のうえ、西日本シティ銀行の投融資先の事業活動と自然資本との関連性についてTNFDのLEAPアプローチに沿った分析に着手しました。

分析の結果、西日本シティ銀行の主な投融資先の事業活動は、水資源をはじめとする豊かな自然資本に依存する一方、水資源利用や事業活動の過程における騒音の発生等を通じて自然に圧力を与えていることを認識しました。今後も分析の高度化に努めていきます。

※自然関連課題の評価・管理の一連のプロセス。

Locate 自然との接点の発見 Evaluate 依存関係/影響の診断 Assess 重要なリスク・機会の分析 Prepare 対応/報告のための準備
セクター分析

TNFDにおける優先セクターと西日本シティ銀行における総与信残高に占める割合の多いセクターより、11セクターを選定し、それらの事業活動による自然への依存及び自然へ与える影響をENCORE※1ツールを用いて分析しました。

分析の結果、すべてのセクターが水の「供給」や「浄化」または「水害緩和」に関連する生態系サービスに高いレベル※2で依存していることを認識するとともに、「妨害」、「大気汚染物質排出」等の影響のレベルが高いセクターの存在を認識しました。

「依存」※3に関するヒートマップ
「影響」※4に関するヒートマップ
  • ※1 投融資先企業の自然資本への影響・依存度を金融機関が評価するために用いられるツール。
  • ※2 ENCOREでは5段階(VL=非常に低い、L=低い、M=中レベル、H=高い、VH=とても高い)評価で依存・影響度を評価しており、HまたはVHを高いレベルと認識している。
  • ※3 「水供給」や「洪水緩和」等の生態系サービスへの依存を評価する。国連環境経済会計生態系会計システム(SEEA-EA)に従って3つの生態系サービスカテゴリー(①供給サービス、②調整・維持サービス、③文化サービス)から構成されるが、本ヒートマップにおいては、生態系の物質循環に重要な①、②の生態系サービスのみ取り上げている。なお、③の生態系サービスはレクリエーション活動や精神的充足といった事業活動への源泉として重要であり、いくつかの対象セクターが高いレベルで依存していることを確認している。
  • ※4 事業活動が自然に影響を与える要因として「水の利用」や「生態系(陸・海・淡水域)の利用」などの項目がある。本ヒートマップにおいては、投融資先事業との関連性が認められない、または著しく低い等の影響の項目は除外している。
ロケーション分析

西日本シティ銀行の主要な投融資先の事業拠点である福岡市・北九州市・久留米市の3市を選定し、生態系の完全性・生物多様性の重要性、さらにENCORE分析の結果を踏まえ、水関連のリスクという観点から、ロケーション分析を実施し、地域特性を把握しました。

環境アセスメントデータベース「EADAS」を用いて、対象3市で設定した拠点から半径20㎞の自然・社会的環境の地理的リスクを分析した結果、3市とも洪水や渇水などの水関連のリスク発生の可能性があることを認識しました。また分析対象エリア全てにおいて、生物多様性重要地域が含まれていることを把握し、西日本シティ銀行の事業範囲において、生物多様性に配慮して事業活動を行う必要性があることを認識しました。

分析した地域の地図
【分析概要】
  • 福岡市については西日本シティ銀行本店営業部、北九州市については西日本シティ銀行北九州営業部、久留米市については西日本シティ銀行久留米営業部を中心に、それぞれ半径20㎞の地理的リスクを分析。
  • 主要調査項目は、生物多様性への重要性・生態系の完全性等(生物多様性重要地域、国立公園、自然環境保全地域)及び水リスク(工業用水路・ダム等、河川・湖沼等)。
  • ※地域特性を把握するために必要となる自然環境や社会環境に関する情報を収録・提供している環境省のデータベース(「環境アセスメントデータベース」)を参照。
    https://eadas.env.go.jp/eiadb/ebidbs/
    • 生物多様性重要地域(KBA:Key Biodiversity Area)(コンサベーションインターナショナル)
    • 国立公園・国定公園(環境省)
    • 自然環境保護地域(環境省)
    • 利水現況図(国土交通省)

これらの分析より、西日本FHは自然に関する主なリスクを以下のとおり認識しています。

自然に関する主なリスク
  • ※1 時間軸における短期は3年未満、中期は3年~10年、長期は10年超。
  • ※2 気候変動に関するリスクに記載しているものと同様のリスクについては、内容を省略。
自然に関する機会

西日本FHは、分析の結果より、サステナブルファイナンス等を通じて、投融資先の生態系保護等の取組みを後押しすることが、地域の自然資本の向上につながると認識しました。

西日本FHは、自然に関する主な機会を以下のとおり認識しています。

自然に関する主な機会
  • ※時間軸における短期は3年未満、中期は3年~10年、長期は10年超。

リスク管理

西日本FHは、影響度や蓋然性の観点から、サステナビリティに関するリスクをトップリスクの一つとして特定しています。

自然関連課題については、投融資先の事業活動と自然資本との関連性についての分析を進めています。

また、環境・社会に大きな影響を与える可能性が高い特定のセクター等に対する投融資については、方針を定め、適切に対応しています。

今後も継続的に、サステナビリティ関連のリスクをコントロールするための態勢整備等に努めていきます。

特定セクター等に対する投融資方針

指標と目標

サステナブルファイナンス実行額

西日本FHは、環境関連融資や創業支援等の持続可能な社会の実現に資するファイナンスを「サステナブルファイナンス」と位置付け、グループの実行額目標「2021年度から2030年度までに累計2兆円」を策定しています。お客さまの気候変動対応をはじめとする環境・社会課題の解決支援を通じて目標達成を目指します。

<サステナブルファイナンス累計実行額(2行合算)>
  • ※2021年度から各年度末までの累計実⾏額。
主な投融資対象・商品
  • 再生可能エネルギー発電事業
  • 低・脱炭素化に資する設備投資
  • 創業支援
  • 地方創生
  • 医療・福祉業
  • 教育業
  • 農林漁業
  • SDGs応援ローン
  • SDGs私募債
  • サステナビリティ・リンク・ローン
  • ポジティブ・インパクト・ファイナンス
  • グリーンボンド
  • ソーシャルボンド
  • サステナビリティボンド

etc